コンクール概要と優勝の快挙
2025年5月14日から17日にかけて、イタリア中部トスカーナ州グロッセート県のオルベテッロで開催された「オルベテッロ国際ピアノコンクール2025」のファイナルにおいて、日本人ピアニストの三原有紀(みはら ゆき)さんが第1位に輝きました。同コンクールは対面式の「マスター部門」として実施され、審査の結果、三原さんが優勝を果たし、4,000ユーロ(約65万円)の賞金と共に、優勝者コンサートの出演権も獲得しました。
三原さんは自身のSNSで「イタリアのOrbetello国際ピアノコンクールで、第1位をいただきました!イタリアの空気に包まれて、心がチャージされた数日間。そのなかで、第1位というかたちで背中を押していただけたことに感謝しています」と喜びを表明しています。
オルベテッロ国際ピアノコンクールについて
オルベテッロ国際ピアノコンクールは、イタリア・トスカーナ州グロッセート県オルベテッロ市で開催される国際的なピアノコンクールです。2025年は「対面式コンクール(Master Competition)」と「オンラインコンクール(Online Competition)」の2部門が実施されました。
マスター部門(三原さんが参加)
- 会場:オルベテッロ市内のAuditorium(Piazza della Repubblica 1)
- 開催期間:2025年5月14日〜17日
- 参加資格:2025年5月17日時点で36歳未満(35歳以下)のピアニスト
- 審査方法:予選、準決勝、決勝の3ラウンド制
- 賞金:第1位 4,000ユーロ+コンサート出演権、第2位 2,000ユーロ、第3位 1,000ユーロ
コンクールの特徴
コンクールでは、参加者は各ラウンドで異なるレパートリーを演奏します。予選では15分以内の演奏(ショパン、リスト、スクリャービン、ラフマニノフ、プロコフィエフ、ドビュッシー、リゲティらのエチュードを含む)、準決勝(最大12名)では30分以内の演奏(ハイドン、クレメンティ、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルトのソナタの第1楽章を含む)、決勝(最大3名)では45分以内の演奏(異なる様式・時代の2つの作品)が求められました。
三原有紀さんのプロフィール
大阪府出身の三原有紀さんは、洗足学園音楽大学大学院を首席で卒業後、一旦一般企業に就職。約3年間の社会人経験を経て、音楽への情熱を再確認し、イタリアへ留学しました。イタリア国立ノヴァーラ音楽院を賞賛付き満場一致の満点、さらに特別名誉賞を得て卒業しています。
主な受賞歴
- 第41回PTNAピアノコンペティション グランミューズG部門金賞
- 第3回Città di Villafranca国際ピアノコンクール第1位、審査員特別賞
- 第3回オレッジョ国際ピアノコンクール第2位、Sergio Fiorentino賞
- 第30回チッタ・ディ・カントゥ国際ピアノコンクール第2位
- 第1回びわ湖ホールピアノコンクール第1位
- 2025年オルベテッロ国際ピアノコンクール第1位
音楽的背景と師事した先生方
三原さんはこれまでに、井上聡美、今野早苗、清水将仁、黒田亜樹、藤井一興(日本)、Luca Schieppati、Mario Coppola(イタリア)の各氏に師事してきました。幼少期からピアノを学び始め、特にフランス音楽への造詣が深いことが知られています。
三原有紀さんの音楽に対する姿勢と経歴
三原さんは独自の音楽的道のりを歩んできました。大学院修了後に一般就職し、一度はピアノから離れましたが、その3年間の経験が「ピアノを弾きたい」という気持ちを再確認させるきっかけとなりました。
「ピアノから離れていた3年間があったからこそ、全力で打ち込めた部分もあった」と三原さんは語ります。留学資金を貯めることもでき、「ピアノを弾きたい」という気持ちに改めて気づくことができたことが、現在の演奏活動に大きな影響を与えています。
コロナ禍の影響でイタリアから突然帰国せざるを得なかった経験もありましたが、「絶対に音楽は続けたい」という強い思いを持ち続け、目標を見失わないためにさまざまなコンクールに挑戦してきました。三原さんにとって、コンクールは「賞を受賞するため」というよりも、「自分を成長させるための機会」として活用してきたといいます。
オルベテッロについて
コンクールが開催されたオルベテッロは、イタリア共和国トスカーナ州グロッセート県にある人口約14,200人の自治体です。ローマの北西約120kmに位置し、オルベテッロ潟に面した美しい町として知られています。トスカーナ南部・マレンマ地方に位置し、モンテ・アルジェンタリオ半島と本土を結ぶ砂州の中央部に位置する細長い町です。
1557年にはスペインの駐屯部隊が設置されるなど、歴史的にも重要な位置を占めてきました。現在はその美しい自然環境から「イタリアの最も美しい村」にも認定されており、夏のリゾート地としても人気があります。
今後の活動
三原さんは現在、日本やイタリア、シンガポールを拠点にソロ、室内楽の分野で活躍しています。特に稲本有彩さん(チェロ)との「Duo Claire」としての活動も積極的に行っており、コンチェルトソリストとしてオーケストラと共演するなど、活動の幅を広げています。
今回のオルベテッロ国際ピアノコンクールでの優勝によって、受賞記念コンサートへの出演が決定しており、さらなる活躍が期待されています。
公式サイト情報
- オルベテッロ国際ピアノコンクール公式サイト: https://www.orbetellopianocompetition.com/
この記事では、オルベテッロ国際ピアノコンクール2025での三原有紀さんの優勝について詳しくお伝えしました。音楽の道を一度離れながらも、強い情熱で再び演奏家として活躍する三原さんの姿勢は、多くの音楽家や音楽を志す人々にとって大きな励みになることでしょう。今後のさらなる活躍に注目していきたいと思います。
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