気鋭のブルックナー研究者が贈る ―
『ブルックナーのしおり -生涯と作品へのアプローチ-』
石原勇太朗/著 (音楽之友社)
生誕200周年を迎えたブルックナー研究に、待望の一冊が登場しました。『ブルックナーのしおり ―生涯と作品へのアプローチ』(音楽之友社)は、若手音楽学者として注目を集める石原勇太郎氏による渾身の一作です。
著者の石原勇太郎氏は、
東京音楽大学、同大学院博士後期課程で研鑽を積み、
国際ブルックナー協会やアメリカ・ブルックナー協会にも所属する気鋭の研究者です。
演奏家としての経験も持ち合わせ、
作曲や指揮活動も行うなど、多角的な視点からブルックナーの音楽に向き合ってきた経歴の持ち主です。
本書の特筆すべき点は、著者の豊富な研究実績に裏打ちされた確かな知見です。ブルックナーの交響曲における調構造や改訂版の比較研究など、
数々の論文や学会発表を重ねてきた石原氏ならではの、作品の深層まで掘り下げた解説が存分に盛り込まれています。
384ページに及ぶ本文では、
三つの視点 ―作品解説、 伝記、 エピソード ―から、ブルックナーの全体像に迫ります。
特に交響曲の解説では、著者独自の形式ガイド表を用いて、
これまで「難解」とされてきた楽曲構造を明快に解き明かしています。
本書の革新的な試みの一つが、全ての作品解説にYouTubeのQRコードを付したこと。
音楽を聴きながら読み進めることができるため、ブルックナーの作品に詳しい方でなくても手に取りやすそうです。
さらに、専門用語集や作品一覧、研究文献リストなど、充実した資料編も見逃せません。
これらは著者が数々のCD解説や演奏会プログラムノートの執筆を通じて培った、読者目線の分かりやすさが活かされています。
生誕200年という節目に発表された本書。
単なるガイドを超えて、ブルックナー研究の新たな地平を切り拓く意欲作となっています。クラシック音楽ファンはもちろん、音楽研究に携わる方々にとっても、必見の一冊です。
「ブルックナーのしおり-生涯と作品へのアプローチ-」
音楽之友社販売ページ:https://www.ongakunotomo.co.jp/catalog/detail.php?id=215340
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