彩の国さいたま芸術劇場、2025年度ラインナップを発表 – バッハから現代ダンスまで多彩な世界

彩の国さいたま芸術劇場外観

埼玉県の文化拠点として親しまれている彩の国さいたま芸術劇場が、2025年度のラインナップを発表しました。近藤良平芸術監督の2期目となる新シーズンは、クラシック音楽からコンテンポラリーダンス、演劇まで多彩なジャンルをラインナップし、「クロッシング(交差)」をテーマにした多様な芸術体験を提供します。

森の中から広がる新たな芸術体験

3月25日に行われた記者会見では、近藤良平芸術監督と埼玉県芸術文化振興財団の加藤容一理事長が登壇。近藤監督は2期目を迎えるにあたり、「ここから次なる30年を目指してスタートする気持ちで、みなさんとワクワクしながらやっていこうと思っています。また新たなことがいっぱい始まります」と意欲を語りました。

今回のシーズンチラシは、森の中に近藤監督が入っていくビジュアルが印象的。「森は中に入ると暗いですが、あえて入って喜びの中に迷い込むという、新しいものにいっぱい出会えるかなとイメージして描きました」と近藤監督は説明しています。1期目はコロナ禍や劇場のリニューアルオープンを経験し、「模索」の時期だったといいますが、「2期目では、芸術監督としてできることを最大限生かして、広がりを作っていきたい」と抱負を述べました。(出典:ぶらあぼONLINE

注目の音楽公演

バッハ・コレギウム・ジャパン J.S.バッハ「マタイ受難曲」- 新シーズンの幕開け

バッハ・コレギウム・ジャパン マタイ受難曲

2025年度の幕開けを飾るのは、4月20日に行われるバッハ・コレギウム・ジャパンによるJ.S.バッハ「マタイ受難曲」。鈴木雅明指揮のもと、ソリストにはハナ・ブラシコヴァ(ソプラノ)や、マリアンネ・ベアーテ・キーラント(アルト)など、BCJ公演に欠かせない実力派歌手が並びます。バッハの傑作である「マタイ受難曲」で新シーズンが華々しく開幕します。

ユリアンナ・アヴデーエワ ピアノ・リサイタル – ショスタコーヴィチ没後50年に捧げる全曲演奏

6月14日には、2010年のショパン国際ピアノ・コンクール優勝者ユリアンナ・アヴデーエワによるピアノ・リサイタルが実現します。没後50年となるショスタコーヴィチの傑作「24の前奏曲とフーガ」全曲を、この彩の国公演のみで披露するという貴重なプログラムです。ショスタコーヴィチの複雑で深遠な世界を、アヴデーエワの研ぎ澄まされた技術と解釈で堪能できる特別な機会となります。

フィリップ・ジャルスキー&ティボー・ガルシア デュオ・リサイタル – 異色の競演

10月13日には、「カウンターテナーの貴公子」フィリップ・ジャルスキーと、ギター界の新星ティボー・ガルシアによるデュオ・リサイタルが予定されています。声とギターという繊細な響きの組み合わせが生み出す独特の音楽世界を楽しめる公演です。

エトワール・シリーズ・プラス – 注目の若手アーティストが集う

「エトワール・シリーズ・プラス」では、務川慧悟(ピアノ、6月・11月)と金川真弓(ヴァイオリン、9月・2026年3月)が登場。務川は6月に、黒川侑(ヴァイオリン)、アレッサンドロ・ベヴェラリ(クラリネット)という珍しい編成のトリオで公演。金川は9月に弦楽三重奏、2026年3月には2日間かけてJ.S.バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ全曲に挑みます。

世界の精鋭が集うダンス公演

アクラム・カーン「ジャングル・ブック」- アニメーションとダンスの融合

6月20日から22日には、現代ダンスの旗手アクラム・カーンによる「ジャングル・ブック」が上演されます。キプリングの名作を気候変動をテーマに再解釈し、ダンスとアニメーションが一体となった舞台は必見です。近藤監督は「入り込んでしまう作品。ダンスと言葉と、アニメの融合が絶妙で、一つの芸術としてぜひ観てほしい」と推薦しています。

ヴッパタール舞踊団 ピナ・バウシュ「Sweet Mambo」- 8年ぶりの来日公演

11月27日から30日には、世界的振付家ピナ・バウシュの遺した名作「Sweet Mambo」がヴッパタール舞踊団により上演されます。8年ぶりの来日となる今回は、ピナと長年活動を共にした初演時のオリジナルメンバーが舞台に立ちます。バウシュ最晩年の作品を、彼女の芸術を体現してきたダンサーたちによって体感できる貴重な機会です。

コンドルズ埼玉公演2025新作「BORN TO RUN」- 近藤良平の創造力

6月7日と8日には、近藤良平が率いるコンドルズの埼玉公演「BORN TO RUN」が予定されています。芸術監督自身が振付・演出を手がける新作は、彼ならではのユーモアと深い洞察に満ちた作品になることでしょう。

演劇からユニークな企画まで

彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd Vol.2「マクベス」

5月には、吉田鋼太郎シェイクスピア・シリーズ芸術監督が自ら演出する「マクベス」が上演されます。藤原竜也と土屋太鳳がマクベス夫妻を演じ、河内大和、廣瀬友祐らが共演する豪華キャスト陣で、シェイクスピアの不朽の名作に挑みます。

カンパニー・グランデ 新作 – 年齢を超えた創造の場

2026年2月には、近藤監督が立ち上げた「カンパニー・グランデ」の新作が上演されます。16歳から83歳までのさまざまなバックグラウンドを持つ120人からなるこの集団は、「大きな船のようなシアター・グループ」として新たな表現に挑戦します。

埼玉会館100周年記念 寿ぎ狂言「万作・萬斎の世界」

2026年には埼玉会館が創立100周年を迎えることを記念して、2026年2月14日に「寿ぎ狂言 万作・萬斎の世界」が上演されます。日本の伝統芸能の精髄を一流の芸術家たちが披露する特別公演です。

多彩なシリーズ企画

2025年度は継続的なシリーズ企画も充実しています。県内のさまざまな文化や人々を訪ねる「埼玉回遊」、パーキンソン病患者のためのダンス・プログラム、「光の庭プロムナード・コンサート」や「埼玉会館ランチタイム・コンサート」など、地域に根ざした取り組みも多数予定されています。

彩の国さいたま芸術劇場の未来

会見では、劇場の今後についても言及がありました。県の方針により劇場ごとの公募となり、最終的な審査の結果、埼玉県芸術文化振興財団が指定管理者の候補として審議が進んでいるとのこと。加藤理事長は「公共劇場のあり方、県民のみなさんが何を望んでいるのかを改めて考えるなかで、我々のいく道をもう一度確認する、逆にいい機会にしようと考えました」と語りました。

2025年度、彩の国さいたま芸術劇場と埼玉会館は、バッハからピナ・バウシュまで、クラシックからコンテンポラリーまで、多彩なジャンルが交差する芸術の森として、観客を新たな体験へと誘います。森の中から見える光を求めて、新しい芸術との出会いを楽しみましょう。

公演詳細・チケット情報
彩の国さいたま芸術劇場/埼玉会館
公式サイト:https://www.saf.or.jp/arthall/

※2025年3月25日現在。公演開催日、出演者等は変更になる場合があります。


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