巨匠ピアニストが贈る至高のピアノ書籍10選

ピアノを愛する方々にとって、一流のピアニストたちの知見や経験は貴重な宝物です。今回は国内外の著名なピアニストが執筆した選りすぐりの10冊をご紹介します。演奏テクニックから音楽哲学、自伝まで、あなたのピアノライフを豊かにする名著ばかりです。

1. 『静寂から音楽が生まれる』アンドラーシュ・シフ著

現代最高峰のピアニストと称されるアンドラーシュ・シフの珠玉のインタビュー&エッセイ集。バッハやベートーヴェン作品への洞察から自身の人生哲学まで、シフの音楽に対する深い思索が詰まっています。第1部では芸術家としての姿勢や演奏解釈の方法論に加え、貴重な人生経験が語られ、第2部では様々な作曲家や音楽への洞察が繊細に綴られています。

「音楽は一回性の出来事である。一回ごとの奇跡に驚嘆できるのは、前後に静寂があるからなのだ」という読売新聞の書評にあるように、シフの演奏と同じく魅力的な語り口から巨匠の素顔が垣間見えます。ピアノを学ぶ人だけでなく、音楽を愛するすべての人に読んでいただきたい一冊です。

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2. 『グレン・グールドのピアノ』ケイティ・ハフナー著

独特な演奏スタイルと奇抜な言動で知られる天才ピアニスト、グレン・グールドの生涯を彼が愛したピアノCD318を軸に描いた伝記。理想のピアノを求め続けた彼の情熱とその背景にある人間ドラマが見事に描かれています。

特筆すべきは本書がグールド本人だけでなく、盲目の調律師エドクィストやスタインウェイ社の歴史、ピアノの構造に関する詳細な描写にまで及んでいること。グールドとピアノCD318と調律師の三者が織りなす黄金期の物語は、まるで変奏曲のように多層的で深みがあります。

Amazonのレビューによれば「読み始めると面白く、中断してページを綴じるのが惜しいくらいだった」という読者も。グールドファンのみならず、すべてのピアニストにおすすめできる一冊です。

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3. 『マルタ・アルゲリッチ 子供と魔法』オリヴィエ・ベラミー著

世界的ピアニスト、マルタ・アルゲリッチについての世界初の本格的伝記。ブエノスアイレスでの子供時代から、1965年のショパン・コンクール優勝、三度の結婚生活、闘病生活まで、アルゲリッチの波乱に満ちた人生が余すところなく綴られています。

本書を通して、類い希な才能を持ちながらも、人前で弾くことを苦にするあまりコンサートをキャンセルしてしまうこともあった彼女の内面が明らかになります。また、グルダ、ミケランジェリ、ホロヴィッツなど個性的な名ピアニストとの交流や、若手音楽家を惜しみなく助ける彼女の温かな人間性も描かれています。

Amazonのレビューでは「天才ゆえの傍若無人振りと苦悩を知ることができる」「時々日時が前後するが、全体的に大変読みやすい文章で楽しむことができた」といった高評価が寄せられています。アルゲリッチのファンはもちろん、現代クラシックの裏側を知りたい人にもおすすめです。

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4. 『ホロヴィッツ・ピアノの秘密』髙木裕著

「ピアノの魔術師」と称されたウラディミール・ホロヴィッツが愛したスタインウェイ・ピアノ〈CD75〉の秘密に迫る一冊。あのグレン・グールドが嫉妬するほど、スタインウェイ本社から特別待遇を受けていたホロヴィッツのピアノの秘密が明らかにされています。

著者は調律師の立場から、ホロヴィッツのピアノがどのように調整され、あの魔術的な音色を生み出していたのかを詳細に解説しています。1887年製と1912年製のスタインウェイがフォルテピアノの伝統を引き継ぎつつ、大音量も実現していた秘密など、ピアノの構造や音響に関する専門的な知識も詳しく書かれています。

ホロヴィッツファンのみならず、ピアノ調律や楽器の仕組みに興味のある方にも必読の書です。

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5. 『チック・コリアのA Work In Progress』チック・コリア著

ジャズピアノの巨匠、チック・コリアが音楽家として大切にしていることや、音楽的に成長するために重要なことについて長年書きとめてきた記録を書籍化した一冊。原文と翻訳を併記した二カ国語版で、コリアの思考と音楽哲学をダイレクトに感じ取ることができます。

本書では、演奏技術を磨くためのヒントから創造性を高める方法、音楽に対する姿勢まで、コリアの経験に基づいた珠玉のアドバイスが詰まっています。ジャズピアニストのみならず、あらゆるジャンルの音楽家にとって参考になる内容です。

Amazonでの評価は4.2/5と高評価。「音楽家なら是非読んでほしい」「素晴らしいインスピレーションをもらえた」というレビューが並んでいます。

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6. 『左手のピアノシリーズ』舘野泉著

2002年に脳梗塞で右手の自由を失いながらも、「左手のピアニスト」として再起を果たした舘野泉による珠玉の著作。左手のみで奏でるピアノ作品に焦点を当て、その独特な奏法と楽曲解釈を紹介しています。

本書は単なる楽譜集ではなく、舘野自身による解説や、試練を乗り越えるためのメッセージなど、音楽家としての深い洞察に満ちています。「母に捧げる子守唄」など、彼自身が左手のために作曲・編曲した作品も収録されています。

「絶望している暇はない」という彼の前向きな姿勢は、どんな困難に直面してもあきらめない勇気を与えてくれる一冊です。

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7. 『ピアニストの時間』舘野泉著

みすず書房から出版された舘野泉のエッセイ集。脳梗塞で右手の自由を失った後の心の葛藤、左手のピアニストとしての再出発、そして新たな音楽との出会いについて綴られています。

舘野は本書で自身の人生経験を通して、音楽の本質とは何か、ピアニストとしての使命とは何かを深く考察しています。また、彼の依頼により数々の作曲家が書き下ろした左手のためのピアノ作品についても語られており、現代音楽の新たな可能性を感じることができます。

絶望を乗り越えて新たな音楽世界を切り開いた舘野の人生哲学は、音楽家だけでなく、困難に立ち向かうすべての人の心に響く普遍的なメッセージを含んでいます。

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8. 『ピアノを語る』バレンボイム・ポリーニ・アラウ他著

ダニエル・バレンボイム、マウリツィオ・ポリーニ、クラウディオ・アラウ、スヴャトスラフ・リヒテル、アルフレッド・ブレンデルという20世紀を代表する5人の巨匠ピアニストのインタビューを収録した貴重な一冊。それぞれのピアニストが独自の視点から、ピアノ演奏の極意、音楽の本質、そして自らの音楽哲学を語っています。

各ピアニストの小伝も収録されており、彼らの歩んできた道のりを知ることができます。特にバレンボイムの語る「音楽と社会」に関する考察や、ポリーニによる現代音楽への取り組みについての言及は示唆に富んでいます。

本書を通して、巨匠たちの音楽への真摯な姿勢や、演奏に対するアプローチの違いを知ることができます。ピアノを学ぶ学生から専門家まで、幅広い読者に薦められる一冊です。

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9. 『闘うピアニスト パデレフスキ自伝』イグナツィ・ヤン・パデレフスキ著

19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍した伝説的ピアニスト、イグナツィ・ヤン・パデレフスキの自伝。単なるピアニストの回顧録を超えて、第一次世界大戦後のポーランド首相も務めたパデレフスキの波乱に満ちた人生が語られています。

ピアニストとしての修業時代から世界的な名声を得るまでの過程、そしてポーランドの独立のために奔走した政治活動まで、芸術と政治の両面での彼の活躍が詳細に描かれています。「芸術家は、仕事を続けながら戦場で死ぬべきだ」という彼の言葉には、芸術家としての使命感と祖国への愛が集約されています。

音楽と政治の両面で輝かしい足跡を残したパデレフスキの生き方は、現代に生きる私たちにも多くの示唆を与えてくれます。

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10. 『クラシック極上ノート』渡辺和彦著

ピアニストではないですが、著名な音楽評論家として知られる渡辺和彦による、クラシック音楽への深い洞察が詰まったエッセイ集。バロックから近代に至る名曲、作曲家、演奏にまつわるエピソードを掘り下げるとともに、ヴァイオリニスト、ピアニスト、指揮者など多彩な演奏家たちの素顔を紹介しています。

本書の魅力は、著者の辛口かつ的確な音楽評と、親しみやすい文体が両立している点。専門的な分析と共に、作品の背景にある歴史や文化的文脈も解説されており、クラシック音楽をより深く理解するための手引きとなっています。

クラシック音楽に詳しくない方も、この本を通じて新たな音楽との出会いを楽しむことができるでしょう。音楽評論の入門書としても最適な一冊です。

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まとめ

ピアノ音楽の奥深さと多様性を知るための10冊をご紹介しました。これらの本は、単に演奏テクニックを教えるものではなく、音楽に対する深い愛情と洞察に満ちています。巨匠たちの言葉に触れることで、あなた自身のピアノライフがさらに豊かなものになるでしょう。

これらの書籍は、ピアノを弾く人だけでなく、クラシック音楽を愛するすべての人にお薦めします。各ピアニストの個性的な音楽観や人生哲学は、演奏の向上だけでなく、私たちの生き方にも大きな示唆を与えてくれるはずです。


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