【徹底解説】エリザベート王妃国際音楽コンクール2025 ピアノ部門
世界的権威あるコンクールの全貌と日本人参加者に迫る

エリザベート王妃国際音楽コンクール(Queen Elisabeth Competition)は、クラシック音楽界における最も歴史ある権威あるコンクールの一つです。2025年は第21回目となるピアノ部門が開催されます。このコンクールは世界三大コンクールの一つとして知られ、若手音楽家たちのキャリアの大きな飛躍の場となっています。
今回は、2025年5月5日から6月11日にかけてベルギーの首都ブリュッセルで開催される本コンクールの概要、審査内容、そして特に日本人参加者に焦点を当ててご紹介します。
コンクール概要
エリザベート王妃国際音楽コンクールは、ベルギーのエリザベート王妃の名を冠する国際的な音楽コンクールです。1937年に設立され、当初はウジェーヌ・イザイ国際コンクールとして知られていました。現在では、ピアノ、ヴァイオリン、チェロ、声楽の4部門が4年周期で実施されています。
2025年のピアノ部門は、世界中から289名の応募があり、ビデオ予備審査を通過した70名が本選に進出します。出場資格は、2024年12月31日時点で18歳以上31歳未満(1993年12月31日以降2007年1月1日以前に生まれた方)となっています。
なお、本来2024年に開催予定だったピアノ部門は、新型コロナウイルスの影響により2020年から2021年へのスケジュール変更が影響し、2025年へと延期されました。
日程
コンクールは以下のスケジュールで実施されます:
入賞者コンサート
- 日程:2025年6月9日(月)
- 会場:ブリュッセル芸術センター
審査方法と課題曲
ビデオ予備審査
ビデオ予備審査では、以下の演奏が求められました:
- バッハの「フーガの技法」BWV 1080からフーガ1曲
- ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、またはシューベルトのソナタ1曲
- ショパンのエチュード1曲
- 自由選択曲(独奏ピアノのための作品)
第1次予選
第1次予選では以下の演奏が求められます:
- ハイドン、モーツァルト、またはベートーヴェン(作品31まで)のソナタの第1楽章
- 自由選択曲
- 4つのエチュード:ショパン1曲、リスト1曲、リゲティ1曲、その他の作曲家によるエチュード1曲
各候補者は、審査員が選択した曲目または曲の一部を演奏します。演奏曲目は本番の1時間前に通知されます。
準決勝
準決勝は各セッション2部構成で実施されます:
- 前半:モーツァルトの協奏曲(KV 271、KV450、KV453、KV456、KV595から選択)をワロン王立室内管弦楽団(指揮:ヴァハン・マルディロシアン)と共演
- 後半:リサイタル(候補者が提案する2つのプログラムから審査員が1つを選択)。プログラムには自由選択曲とアナ・ソコロヴィッチ作曲の委嘱作品「Two Studies for Piano」(2025年5月12日世界初演)を含む
決勝
決勝では以下を演奏します:
- クリス・デフォルト作曲の委嘱作品「Music for the Heart」(2025年5月26日世界初演)
- 自由選択の協奏曲(ブリュッセル・フィルハーモニック、指揮:大野和士と共演)
注目の日本人参加者
2025年のエリザベート王妃国際音楽コンクールには、日本から6名の実力派ピアニストが参加します。ここでは、6名全員のプロフィールをご紹介します。
久末 航(ひさすえ わたる)
1994年生まれ。滋賀県大津市出身。2017年ミュンヘン国際音楽コンクール・ピアノ部門第3位入賞の実績を持つ。東京藝術大学を経て、ドイツのハノーファー音楽大学で学び、現在はヨーロッパを拠点に活動している。繊細かつダイナミックな演奏が高く評価されており、特にドイツ音楽の解釈に定評がある。
亀井 聖矢(かめい まさや)
2001年生まれ。2022年にロン=ティボー国際音楽コンクールのピアノ部門で第1位を獲得し、一躍注目を集めた若手実力派ピアニスト。児玉桃に師事。圧倒的な技巧と表現力を持ち、特にロマン派作品の演奏に定評がある。情熱大陸にも出演し、その演奏姿と音楽性が話題となった。
桑原 志織(くわはら しおり)
1995年生まれ。第16回アルトゥール・ルービンシュタイン国際ピアノコンクールで第2位に入賞するなど、国際的に高い評価を得ている。東京藝術大学、同大学院を経て現在はヨーロッパで研鑽を積んでいる。繊細かつ深い音楽性と、伝統的なピアニズムを継承した演奏が特徴。特にショパンやリストの作品解釈に定評がある。
中川 優芽花(なかがわ ゆめか)
2001年生まれ。2021年の第29回クララ・ハスキル国際ピアノコンクールで第1位を獲得。同コンクールは藤田真央も過去に優勝している名門コンクールとして知られる。東京音楽大学を経て、現在はウィーン国立音楽大学で学んでいる。詩情豊かな音色と自然な音楽性が特徴で、特にモーツァルトやシューベルトの演奏に定評がある。
吉見 友貴(よしみ ゆうき)
2000年生まれ。高校2年生在学中に第86回日本音楽コンクールで最年少優勝という快挙を成し遂げた。桐朋学園大学を卒業後、ヨーロッパで研鑽を積んでいる。知的かつ情熱的な演奏スタイルが特徴で、特にベートーヴェンの作品解釈に定評がある。
太田 糸音(おおた しおん)
1999年生まれ。国内外の数々のコンクールで優秀な成績を収めている。東京音楽大学を卒業後、現在はベルリン芸術大学で研鑽を積んでいる。繊細な音色と豊かな表現力を持ち、バロックから現代音楽まで幅広いレパートリーを得意としている。
過去の実績と歴史
エリザベート王妃国際音楽コンクールは、世界三大コンクールの一つとして知られており、ベルギーのエリザベート王妃の名を冠しています。1937年に初めて開催され、当初はヴァイオリン部門のみでしたが、1938年からピアノ部門も加わりました。
このコンクールの特徴は、他の二つの世界三大コンクール(ショパン国際ピアノコンクール、チャイコフスキー国際コンクール)と比較して、主催国出身の音楽家に対する過剰な思い入れがなく、公平な審査が行われることで評判です。
過去のピアノ部門の優勝者には、エミール・ギレリス(1938年)、レオン・フライシャー(1952年)、ウラディミール・アシュケナージ(1956年)、マルコム・フレイジャー(1960年)など、世界的に活躍するピアニストが名を連ねています。
日本人としては、1991年に上原彩子が第3位、2007年に金子三勇士が第5位、2016年に河村尚子が第2位に入賞するなど、日本人ピアニストも優れた成績を残しています。
チケット情報
エリザベート王妃国際音楽コンクール2025のチケット販売は2025年2月から開始されています。チケットは各ラウンドごとに購入可能で、公式ウェブサイトから予約できます。
第1次予選
料金:15€〜30€
準決勝
料金:15€〜35€
決勝
料金:30€〜70€
入賞者コンサート
料金:30€〜70€
また、複数のラウンドをまとめて購入できるパッケージチケットも用意されており、お得に観覧することができます。
まとめ
エリザベート王妃国際音楽コンクール2025のピアノ部門は、2025年5月5日から6月11日にかけてベルギーのブリュッセルで開催されます。世界中から選ばれた70名の若手ピアニストが、厳しい審査を通過して頂点を目指します。
日本からは久末航、亀井聖矢、桑原志織、中川優芽花、吉見友貴、太田糸音の6名が参加。彼らの活躍に期待が高まります。
このコンクールは単なる競争の場ではなく、若手音楽家たちの才能を世界に発信する貴重な機会です。それぞれのピアニストが自身の音楽性を存分に発揮し、感動的な演奏を披露してくれることでしょう。
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