世界が注目する音楽の祭典
2025年夏、東京を舞台に開催される「第5回Shigeru Kawai国際ピアノコンクール」は、世界各国から集まる才能ある若手ピアニストたちにとって、その腕前を世界に示す重要な機会となります。株式会社河合楽器製作所の創立90周年を記念して2017年に創設されたこのコンクールは、回を重ねるごとに国際的な評価を高め、今や若手ピアニストの登竜門として確固たる地位を築いています。
Shigeru Kawaiの名を冠したこのコンクールは、日本が世界に誇る最高級ピアノ「Shigeru Kawai」の卓越した音色と表現力を通じて、参加者の真の実力と音楽性を問うものです。参加資格は1996年1月1日以降に生まれた若手ピアニストで、国籍を問わず才能ある演奏家に門戸を開いています。

(画像出典:コンクール公式サイト)
コンクールの基本情報
名称: 第5回 Shigeru Kawai 国際ピアノコンクール(略称 SKIPC)
主催: Shigeru Kawai 国際ピアノコンクール委員会
後援: カワイ音楽振興会、カワイ音楽教育研究会、カワイ音楽コンクール委員会
公式ピアノ: Shigeru Kawai フルコンサートピアノ SK-EX(本選)、Shigeru Kawai グランドピアノ(予備審査)
公式サイト: 第5回 Shigeru Kawai 国際ピアノコンクール
審査の流れとスケジュール
コンクールは、「予備審査」→「1次予選」→「セミファイナル」→「ファイナル」の4段階による選抜で行われます。
予備審査(終了):
- 海外: 2025年2月(ビデオ審査)
- 国内・大阪: 2025年3月2日(日) カワイ梅田コンサートサロン「ジュエ」
- 国内・東京: 2025年3月4日(火)~7日(金) カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ」
予備審査の結果は2025年3月10日に発表され、世界22の国と地域から合計324名のエントリーの中から、58名が1次予選への出場資格を獲得しました。
今後のスケジュール:
- 1次予選: 2025年7月26日(土)~28日(月) – カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ」
- セミファイナル: 2025年7月29日(火)~30日(水) – カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ」
- ファイナル: 2025年8月2日(土) – 渋谷区文化総合センター大和田「さくらホール」
- 入賞者演奏会: 2025年8月3日(日) – カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ」
1次予選に先立ち、7月24日(木)~25日(金)にはピアノトライアルが、7月25日(金)には出場順抽選会が予定されています。
予備審査を勝ち抜いた58名の精鋭たち
激戦の予備審査を勝ち抜き、1次予選に進出する58名の出場者が決定しました。国籍別の内訳は、日本が最多の27名、次いで中国が9名、台湾が4名、韓国が3名、ロシアが2名、そしてアメリカ、イタリア、スペイン、ドイツ、セルビア、ポルトガルから各1名という国際色豊かな顔ぶれとなっています。
1次予選進出者完全リスト
- 東 祐輔 (Yusuke AZUMA) – 日本
- チェン イーハン (Yihang CHEN) – 台湾
- 大同 理紗 (Risa DAIDO) – 日本
- ファン ユアン (Yuang FAN) – 中国
- ピエトロ フレサ (Pietro FRESA) – イタリア
- 藤平 実来 (Miku FUJIHIRA) – 日本
- 藤川 天耀 (Takateru FUJIKAWA) – 日本
- ガオ チョンジュン (Chengjun GAO) – 中国
- 五条 玲緒 (Reo GOJO) – 日本
- ハン ユリャン (Yuliang HAN) – 中国
- ギジェルモ エルナンデス バロカル (Guillermo HERNANDEZ BARROCAL) – スペイン
- 東島 由衣 (Yui HIGASHIJIMA) – 日本
- ホア ズーシン (Zixin HUA) – 中国
- ファン イートン (Yi-teng HUANG) – 台湾
- 稲垣 拓己 (Takumi INAGAKI) – 日本
- 石橋 愛 (Ai ISHIBASHI) – 日本
- ジア モーハン (Mohan JIA) – 中国
- 神原 雅治 (Masaharu KAMBARA) – 日本
- 河尻 広之 (Hiroyuki KAWASHIRI) – 日本
- 河野 悟士 (Satoshi KONO) – 日本
- ソニア コヴォリック (Sonja KOWOLLIK) – ドイツ
- パヴレ クルスティッチ (Pavle KRSTIC) – セルビア
- アレクサンドル クトゥーゾフ (Aleksandr KUTUZOV) – ロシア
- マリヤ クズミナ (Mariia KUZMINA) – ロシア
- ラファエル キリチェンコ (Rafael KYRYCHENKO) – ポルトガル
- イ ドフン (Dohun LEE) – 韓国
- イ セボム (Saebeom LEE) – 韓国
- イ ソウン (Seoeun LEE) – 韓国
- リー ティエントゥオ (Tiantuo LI) – 中国
- ルオ ジエ (Jie LUO) – 中国
- グレゴリー マーティン (Gregory MARTIN) – アメリカ
- 南 ことこ (Kotoko MINAMI) – 日本
- 美里 芽玖 (Megu MISATO) – 日本
- 三浦 颯太 (Sohta MIURA) – 日本
- 森永 冬香 (Fuyuka MORINAGA) – 日本
- 長山 佳加 (Yoshika NAGAYAMA) – 日本
- 仲山 晴香 (Haruka NAKAYAMA) – 日本
- 小形 然 (Zen OGATA) – 日本
- 岡田 芳樹 (Yoshiki OKADA) – 日本
- 大野 謙 (Ken ONO) – 日本
- 大山 桃暖 (Modan OYAMA) – 日本
- 朴 沙彩 (Saaya PAKU) – 日本
- ポン イーシン (Yixin PENG) – 中国
- レン ツーミン (Ziming REN) – 中国
- 坂原 菫礼 (Sumire SAKAHARA) – 日本
- 塩﨑 基央 (Motochika SHIOZAKI) – 日本
- 杉本 沙織 (Saori SUGIMOTO) – 日本
- 鈴木 優輔 (Yusuke SUZUKI) – 日本
- 津野 絢音 (Ayane TSUNO) – 日本
- 上西 富美子 (Fumiko UENISHI) – 日本
- 梅﨑 秀 (Shu UMEZAKI) – 日本
- ウー フィオナ (Fiona WU) – 台湾
- ウー ナターシャ (Natasha WU) – 台湾
- シア ホーティン (Heting XIA) – 中国
- 山本 悠流 (Yuri YAMAMOTO) – 日本
- ヤオ ジャリン (Jialin YAO) – 中国
- 米滿 希咲来 (Kisara YONEMITSU) – 日本
- チャン ジュオイェン (Zhuoyan ZHANG) – 中国
多くの出場者は国内外の著名なコンクールでの入賞歴を持つ実力者です。例えば、神原雅治氏は最近のロン=ティボー国際音楽コンクール2025で第4位に入賞しており、今回のコンクールでも注目を集めています。
国際的に著名な審査委員陣
コンクールの審査は、国際的に著名なピアニストや教育者によって厳正に行われます。
審査委員長
植田 克己(日本): 東京藝術大学名誉教授、上野学園大学特任教授。1977年ロン=ティボー国際音楽コンクール第2位大賞受賞。国内外での演奏活動やベートーヴェン・シリーズの開催など、多彩な活動で知られる。
審査委員
フィリップ・ジュジアーノ(フランス): 1995年ショパン国際ピアノコンクール最高位(実質2位)受賞者。ショパン作品の演奏に定評があり、世界中の主要コンサートホールで演奏活動を展開。「ポーランド文化大使」の称号を授与。
ケヴィン・ケナー(アメリカ): 1990年ショパン国際ピアノコンクール最高位獲得。当代最高のショパン演奏家として知られる。マイアミ大学フロスト音楽院教授としても活躍。
三木 香代(日本): 1985年ショパン国際ピアノコンクール最優秀演奏賞受賞。国内外の多数の音楽コンクールで入賞・受賞歴を持つ。現在、国立音楽大学教授、日本ショパン協会理事。
パーヴェル・ネルセシヤン(ロシア): 国立モスクワ音楽院ピアノ科教授、ボストン大学ピアノ科教授。ベートーヴェン国際コンクール2位、ダブリン国際コンクール優勝などの実績を持つ。
小川 典子(日本): リーズ国際ピアノコンクール入賞以来35年以上、英国と日本を拠点に国際的活動を展開。BISレーベルから約40枚のCDをリリース。浜松国際ピアノコンクール審査委員長なども務める。
岡本 美智子(日本): 桐朋学園大学卒業。第3回ヴァン・クライバーン国際コンクール入賞、第6回チャイコフスキー国際コンクール最優秀伴奏者賞受賞。現在、日本ピアノ教育連盟名誉会長、日本ショパン協会理事、桐朋学園大学音楽学部ピアノ科特命教授。
各ステージの課題曲 – 音楽的技術と表現力を問う多彩なプログラム
予備審査(終了)
予備審査では、下記(1)と(2)を合計15分以内で演奏しました。
- F. ショパン 練習曲 Op.10またはOp.25より1曲を選択
- 自由曲(F. ショパン:練習曲 Op.10またはOp.25以外の楽曲)
1次予選
1次予選では、下記(1)と(2)を合計20分以内で演奏します。
- 以下の中から1つを選択:
- F. シューベルト:4つの即興曲 Op.90/D899または Op.142/D935より1曲、または楽興の時 Op.94/D780より1曲ないし数曲
- F. ショパン:ノクターンより1曲
- F. メンデルスゾーン:無言歌集 第1巻~第8巻より1曲ないし数曲
- J. ブラームス:Op.76、Op.116、Op.117、Op.118、Op.119から1つを選び、1曲ないし数曲
- 自由曲(予備審査で演奏した楽曲の重複は不可)
セミファイナル
セミファイナルでは、下記(1)と(2)を合計30分以上~40分以内で演奏します。
- F.J. ハイドン、W.A. モーツァルト、L.v. ベートーヴェンのソナタより任意の1曲(全楽章)、または変奏曲1曲
- 自由曲(1次予選で演奏した曲の重複は不可、予備審査曲の重複は可)
ファイナル
ファイナルでは、指定されたピアノ協奏曲から1曲を選択し、事務局が指定する伴奏者と共演します。選択肢には、ベートーヴェン、モーツァルト、ショパン、シューマン、リスト、サン=サーンス、チャイコフスキー、ラフマニノフ、ラヴェル、プロコフィエフの協奏曲が含まれています。伴奏者としては、アンドレイ・ピサレフ氏(ロシア)とアレクセイ・メルニコフ氏(ロシア)が担当します。
ファイナリストには、1人10分間のピアノセレクションの機会が与えられ、2台の「Shigeru KawaiフルコンサートピアノSK-EX」から自身が本選で使用する楽器を選定することができます。
全ての課題曲の詳細と選択肢は公式サイトの課題曲ページでご確認いただけます。
賞と副賞
コンクールでは以下の賞が授与されます:
- 第1位: 賞金 200万円、表彰状、トロフィー
- 第2位: 賞金 100万円、表彰状、トロフィー
- 第3位: 賞金 50万円、表彰状、トロフィー
- 第4位: 賞金 20万円、表彰状
- 第5位: 賞金 10万円、表彰状
- 第6位: 賞金 5万円、表彰状
- 聴衆賞: 賞金 5万円、表彰状、記念品
特筆すべきは、第1位受賞者には賞金だけでなく、受賞から1年間を通して(株)河合楽器製作所主催のコンサートおよびリサイタルへの出演機会やマスタークラス受講の機会が与えられることです。これは若手演奏家のキャリア形成において非常に貴重な副賞といえるでしょう。
入賞者演奏会
第1位から第6位の入賞者は、2025年8月3日(日)カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ」にて開催の入賞者演奏会に出演することが義務付けられています。この演奏会では、コンクールで演奏した曲目から時間内で抜粋して演奏します。各入賞者の演奏時間は、第1位は30分以内、第2位は25分以内、第3位は20分以内、第4位から第6位は10~15分以内と定められています。
まとめ – 期待が高まる音楽の祭典
2025年夏に東京で開催される第5回Shigeru Kawai国際ピアノコンクールは、予備審査を通過した58名の才能あふれる若手ピアニストたちによる、音楽の技巧と表現力の競演が期待されます。世界22カ国・地域から324名の応募者の中から選ばれた精鋭たちが、各ステージで持てる力を発揮し、最終的には栄冠を争います。
特に注目すべきは、日本からの出場者が27名と約半数を占める一方で、中国、台湾、韓国、ロシアなどアジア圏の出場者が多いことです。また、ヨーロッパや北米からの参加者も含めた国際色豊かな構成は、このコンクールが真に国際的な音楽の祭典であることを証明しています。
ロン=ティボー国際コンクールで入賞した神原雅治氏をはじめ、すでに国際的な舞台で活躍する演奏家たちも参加しており、レベルの高い演奏が期待されます。厳正な審査を通過した彼らが、Shigeru Kawaiピアノから引き出す豊かな音色と感性に満ちた演奏は、クラシック音楽ファンにとって見逃せない機会となるでしょう。
このコンクールの詳細情報や最新ニュースは、公式サイトで随時更新されています。若き才能の登竜門として、クラシック音楽の未来を担う演奏家たちの熱演にご期待ください。
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