
記念すべき初回受賞作品に
2025年5月21日、「日本版グラミー賞」とも称される「MUSIC AWARDS JAPAN 2025」において、坂本龍一の最後のピアノソロコンサート作品「Opus」が最優秀クラシックアルバム賞(Best Classical Album)を受賞した。この賞は今回が記念すべき第1回目の創設であり、坂本龍一の「Opus」がその栄えある初代受賞作品となった
「Opus」とは何か ―生涯最後の音楽的遺言

「Opus」は、2023年3月28日に他界した坂本龍一が、この世を去る前に遺した最後のピアノソロコンサート作品である。2022年9月、坂本が「日本でいちばん音のいいスタジオ」と評する東京のNHK509スタジオで8日間に渡って収録された
収録楽曲 ―人生の軌跡を辿る20曲
アルバムには、坂本自身が「生涯の最後に遺すべき曲」として選び抜いた20曲が収録されている:
- Lack of Love
- BB
- Andata
- Solitude
- for Jóhann
- Aubade 2020
- Ichimei – small happiness
- Mizu no Naka no Bagatelle
- Bibo no Aozora
- Aqua
- Tong Poo (Yellow Magic Orchestra時代)
- The Wuthering Heights
- 20220302 – sarabande
- The Sheltering Sky
- 20180219(w/prepared piano)
- The Last Emperor
- Trioon
- Happy End
- Merry Christmas Mr. Lawrence
- Opus – ending
この楽曲リストには、代表作「戦場のメリークリスマス(Merry Christmas Mr. Lawrence)」「ラストエンペラー(The Last Emperor)」などの映画音楽、最後のオリジナルアルバム『12』からの楽曲、そして初めてピアノソロで演奏されたYellow Magic Orchestra時代の名曲「Tong Poo」も含まれている。
MUSIC AWARDS JAPAN 2025について
MUSIC AWARDS JAPAN(MAJ)は、音楽業界の主要5団体(日本レコード協会、日本音楽事業者協会、日本音楽制作者連盟、日本音楽出版社協会、コンサートプロモーターズ協会)が垣根を越えて設立した一般社団法人カルチャー アンド エンタテインメント産業振興会(CEIPA)が主催する、国内最大規模の国際音楽賞である。
「世界とつながり、音楽の未来を灯す(ともす)。」をコンセプトに、今年京都を舞台に初開催となった。アーティストや楽曲、ジャンル、メディア別など全62部門を表彰し、総勢5000人を超えるアーティスト、音楽関係者が投票を行った
同時に輝いた元妻・矢野顕子の受賞
興味深いことに、同じ授賞式で坂本龍一の元妻である矢野顕子が上原ひろみと手がけた『Step Into Paradise -LIVE IN TOKYO-』が最優秀ジャズアルバム賞を受賞した。二人の偉大な音楽家が、それぞれ異なるジャンルで同時に栄誉を受けるという、音楽史に残る瞬間となった。
グラミー賞ノミネートも
「Opus」は既に第67回グラミー賞にもノミネートされており、国際的にも高く評価されている作品である。日本のアーティストの作品が、国内外で同時に認められるという快挙を成し遂げている。
多様なフォーマットでのリリース

「Opus」は配信はもちろん、アナログレコード、CD、Blu-ray、DVDとして発売されている。さらに、インタビュー完全版や収録時に坂本龍一本人が使用した譜面20曲分の完全複製、匂い香を同梱した限定盤も発売されており、ファンにとって貴重なコレクターズアイテムとなっている
音楽を超えた文化的意義
「Opus」は単なるライブアルバムを超越した、坂本龍一という偉大な音楽家の「人生の詩」のような作品である。音楽という枠を超えた、まさに「芸術」と呼ぶにふさわしい作品として評価されている
結語 ―永続する音楽的遺産
今回の受賞は、坂本龍一が生涯をかけて築き上げた音楽的遺産が、改めて高く評価された証である。YMO時代からソロ活動、映画音楽まで、多岐にわたる音楽活動の集大成として制作された「Opus」が、記念すべき第1回最優秀クラシックアルバム賞に輝いたことは、日本の音楽史において特別な意味を持つ出来事といえるだろう。
教授が最後に私たちに遺してくれたこの音楽的遺言は、これからも多くの人々の心に響き続け、その音楽的影響力は永続することであろう。
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