フランス東部ブザンソンで9月22〜27日に開催された「第59回ブザンソン国際若手指揮者コンクール」で、米田覚士(よねだ・さとし)さん(29)がグランプリを受賞しました。審査員長はミヒャエル・シェンヴァント。最終日はドイツ放送フィル(ザールブリュッケン・カイザースラウテルン)を指揮する本番形式の審査で、満場一致での栄冠です。
結果と受賞のポイント
最終審査に進んだのは、米田さんのほかアメリカのキリアン・フリーデンバーグ、中国の謝天一(Tianyi Xie)の3名。いずれもドイツ放送フィルを振り、ベルリオーズ《ベアトリスとベネディクト》序曲、レジス・カンポ《デリリウム・スケルツォ》(世界初演)、プロコフィエフ《ロメオとジュリエット》組曲からの抜粋という同一プログラムで腕を競いました。
審査の結果、米田さんがグランプリを獲得。特別賞(審査員特別言及)と聴衆賞、オーケストラ賞はいずれも最年少の謝天一に授与されています(特別賞は満場一致)。
日本人歴代優勝者の系譜に連なる
ブザンソンは1951年創設の名門コンクールで、日本人指揮者のキャリア形成にも大きく関わってきました。今回の米田さんは、2019年の沖澤のどか以来の日本人優勝で、日本勢として通算11人目の快挙です(過去の優勝者には小澤征爾、佐渡裕、山田和樹ら)。
米田覚士さんのプロフィール
岡山県出身。東京藝術大学音楽学部指揮科で学び、在学中に安宅賞を受賞。高関健、小田野宏之の各氏に師事し、パーヴォ・ヤルヴィや山田和樹らのマスタークラスにも参加してきました。2021年の東京国際音楽コンクール〈指揮〉で入選・奨励賞を受け、以降N響、読響、札響、都響、新日本フィルなど国内主要オーケストラを指揮。
今回の受賞後には、「美しく素晴らしい音楽を世界の人々と分かち合いたい」と喜びを語ったと報じられています(意訳)。岡山の地元メディアや全国紙も、ジュニアオーケストラでの原体験や歩みを紹介し、故郷からのエールが寄せられました。
コンクールの意義と今年の特徴
- 実演本位の審査設計:最終日は本番と同条件の40分ステージでの審査。オーケストラとの関係構築力、現場対応力、音楽的構想力が総合的に問われます。
- 委嘱新作の課題:作曲家レジス・カンポによる《デリリウム・スケルツォ》世界初演が課題に組まれ、現代作へのアプローチも評価軸に。(festival-
- 国際性:最終ラウンドの顔ぶれは米・中・日。事前の春季選考を経て20名が本選に進み、1週間で絞り込む形式でした。
受賞がもたらす展望
ブザンソンのグランプリは、ヨーロッパ圏でのデビューや客演機会の拡大に直結することで知られ、歴代受賞者の多くが国際的なステップアップに成功してきました。今回も公式発表や配信プラットフォームの露出を通じて、米田さんの名は世界の業界関係者に強く印象づけられています。
まとめ
- 優勝:米田覚士(日本、29)— 満場一致。
- 最終候補:キリアン・フリーデンバーグ(米)、謝天一(中)。
- 特別賞・聴衆賞・オーケストラ賞:謝天一。
- 最終ラウンドの曲目:ベルリオーズ、カンポ(初演)、プロコフィエフ。
- 日本勢の通算優勝回数:11人目(前回は2019年の沖澤のどか)。
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