16歳の煌めき、成熟の一音──Tianyao Lyu(リュー・ティエンヤオ)がショパン・コンクール2025で放つ光

ワルシャワで開かれている第19回ショパン国際ピアノ・コンクール。

そこでひときわ強い存在感を放っているのが、中国出身で現在16歳(まもなく17歳)のTianyao Lyu(リュー・ティエンヤオ)だ。

ステージを降りる瞬間に作ったハート、3次予選での“葬送ソナタ”の堂々たる語り口、そしてファイナルの終幕で大きく両腕を広げて喝采に応えた明るい所作まで——演奏と人柄の両面で聴衆を惹きつけ、今大会のアイコン的存在になりつつある。結果発表はまだこれから。いま、最終決戦の行方を楽しみに待ちながら、彼女の素顔と歩みをまとめておきたい。


経歴とバックグラウンド

2008年10月21日生まれ。北京の中央音楽院附属中学でHua Changに学んだのち、現在はポズナン音楽大学でカタジナ・ポポヴァ=ズィドロン(2015、2021年のショパン国際ピアノコンクール審査委員長)に師事。

2024年にはエトリンゲン国際ピアノ・コンクール、ポーランドのシャファルニア国際ショパン・コンクールでいずれも第1位。ザルツブルク室内ソリスツ、寧波交響楽団との共演経験があり、カーネギー・ホールや北京の国家大劇院などでリサイタルを行っている将来有望の一人だ。

2025年ショパン・コンクールでの歩み

第1次予選
Nokturn H-dur, Op. 62 Nr. 1(ノクターン ロ長調 作品62-1)

Etiuda gis-moll, Op. 25 Nr. 6(エチュード 嬰ト短調 作品25-6)

Walc Es-dur, Op. 18(ワルツ 変ホ長調 作品18「華麗なる大円舞曲」)

Barkarola Fis-dur, Op. 60(バルカローレ 嬰ヘ長調 作品60)

第2次予選
Andante spianato i Wielki Polonez Es-dur, Op. 22(アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ 変ホ長調 作品22)

Rondo Es-dur, Op. 16(ロンド 変ホ長調 作品16)

Preludia, Op. 28(前奏曲集 作品28 より)
 Nr. 19 Es-dur/Nr. 20 c-moll/Nr. 21 B-dur/Nr. 22 g-moll/Nr. 23 F-dur/Nr. 24 d-moll

Wariacje B-dur, Op. 2(変奏曲 変ロ長調 作品2)

第3次予選
Mazurki, Op. 59(マズルカ集 作品59)
 Nr. 1 a-moll/Nr. 2 As-dur/Nr. 3 fis-moll

Preludium Des-dur, Op. 28 Nr. 15(前奏曲 変ニ長調 作品28-15「雨だれ」)

Sonata b-moll, Op. 35(ソナタ 変ロ短調 作品35)
 Grave – Doppio movimento/Scherzo. Molto vivace/Marche funèbre/Finale

Berceuse Des-dur, Op. 57(子守歌 変ニ長調 作品57)

ファイナル
ポロネーズ・ファンタジーOp.61ピアノ協奏曲第1番ホ短調Op.11(ワルシャワ国立フィル/A.ボレイコ指揮)。

張りつめた集中と軽やかな開放感を併せ持つ舞台で、終演後に大きく両腕を広げて満場の拍手に笑顔で応えた姿は印象的だった。

“舞台人”としての魅力

彼女がステージを降りる瞬間に見せたハートは、単なる可愛らしさの演出ではない。緊張を溶かし、会場の空気を柔らかく変えるコミュニケーションの才覚だ。星形のヘアアクセや自然体の笑顔も含め、Z世代らしい素直さが、硬直しがちなコンクールの空気をふっと軽くしてくれる。それでいて、鍵盤に指を置いた瞬間には音楽にまっすぐ没入する——その“切り替え”が、彼女の大きな強みだ。

SNSの反応(Xほか)

  • 日本のXでは「16歳とは思えない堂々たる演奏」「鳥肌が立った」「彼女の演奏で初めてショパンの魅力が腑に落ちた」といった投稿が相次ぎ、ファイナル進出のニュースは広く拡散。音楽系メディアの現地アカウントも、取材の合間に彼女の輝きを次々と伝えている。
https://twitter.com/minori_DQ10/status/1979753269112299971
  • 海外掲示板でも「今年もっとも才能を感じる出場者」「第3次で一気に成熟が見えた」など、若さと完成度の同居を評価する声が多い。
    SNS発の熱量は、彼女が“聴かせる”だけでなく“人の心を動かす”タイプのアーティストであることの証左だ。

海外メディアの評価

  • ポーランド国営ラジオは、第2次予選の演奏を「エンジェリック(天上的)」と評し、音色の純度とフレージングの気高さを称賛。
  • 文化芸術メディアは、指ハートや星形アクセといった等身大の魅力に触れつつ、「一音に意味が宿る演奏」「想像力と意図に裏打ちされたテクニーク」と音楽そのものを高く評価。
  • ポーランド通信(PAP)はファイナル当日の会見での彼女のコメントを紹介。「ショパンの音楽はつねに心を動かし、美しい」と語る素直な言葉が、会場の熱気をそのまま伝えている。

いま何が起きている?——“ショパン・マニア”の只中で

100年の節目を迎えたショパン・コンクールは、今年もチケット即完・街ぐるみの熱狂。コンクールは10/18〜20の夜にファイナルが行われ、結果発表はまだこれから。ティエンヤオがどんな栄冠を手にするのか——その瞬間を心待ちにしたい。


まとめ:ティエンヤオが特別な理由

  • 音色の純度と語りの胆力が16歳にして同居。
  • マズルカの身体感覚と**“葬送ソナタ”の成熟**で、ポーランドの聴衆をも唸らせた。
  • 等身大の所作(指ハート、朗らかな受け答え)が、音楽の“届き方”を広げている。
  • ファイナルでの協奏曲も堂々。結果は未発表だが、すでに次代を担う“名前”として記憶された。

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