2019年4月、パリを象徴するノートルダム大聖堂が大火災に見舞われました。
崩れ落ちる尖塔と炎に包まれる光景を目の当たりにした人々は、文化と信仰のシンボルを失うかもしれないという深い悲しみに沈みました。
しかし、そこには1つの奇跡的な救いがありました。大聖堂の心臓とも言える巨大パイプオルガンが破壊を免れたのです。
大規模火災からの再建工事が進み、5年ぶりに公開されたフランス・パリのノートルダム大聖堂。
この度、再開後初めてとなるミサによって平和を願う祈りがささげられ、大聖堂のオルガンが再びパリに響き渡りました。
この夜を彩ったのは、世界が誇るアーティストたちの演奏。
カプソン兄弟
ルノー・カプソン(ヴァイオリン)とゴーティエ・カプソン(チェロ)は、フランス音楽界の宝と称される兄弟です。
この日、彼らのデュエットは会場全体を感動に包み込みました。
プリティ・イェンデ(ソプラノ)
南アフリカ出身の彼女は、この夜「アメイジング・グレイス」を披露し、その清らかで力強い声で観客を魅了しました。世界の主要な歌劇場で主演を務める彼女の歌声は、希望そのものでした。
ラン・ラン(ピアノ)とグスターボ・ドゥダメル(指揮)
サン=サーンスのピアノ協奏曲第2番のフィナーレは、2人の圧巻の演奏が見せ場でした。特にラン・ランの情熱的なタッチが、大聖堂に新たな命を吹き込んだかのようでした。
ノートルダム大聖堂のパイプオルガンは、約8,000本ものパイプで構成されるフランス最大の規模を誇ります。
奇跡的に火災の直撃を免れましたが、鉛の粉塵が内部に侵入し、音色の要となる革部品が汚染されました。この修復には、全パイプの分解、清掃、そして専門的な調整が必要でした。
修復に携わった技術者たちは、「ただ音を戻すだけでなく、このオルガンが次の世代にも響き続けるよう、心を込めて作業を行った」と語っています。
パリ大司教ローラン・ウルリッヒ氏とオルガンの「コール・アンド・レスポンス」のシーン。
特筆すべきは、大司教ローラン・ウルリッヒ氏がラテン語の祈りを唱え、それに応じてパイプオルガンが壮麗な音色で答えた場面です。
この瞬間、大聖堂全体が息を吹き返したように感じられ、会場の誰もが言葉を失いました。
音楽と祈りが一体となったこのシーンは、ノートルダムの再生を象徴する瞬間となりました。
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